2012年12月16日日曜日

「GeForce GTX 660 Ti」レビュー。Kepler世代初のミドルクラスGPUはGTX 580より速かった

GTX660 Ti-DC2T-2GD5
メーカー:
問い合わせ先:テックウインド(販売代理店) info@tekwind.co.jp
メーカー想定売価:3万7000円前後(※2012年8月16日現在,発売は9月以降予定)  日本時間2012年8月16日22:00,NVIDIAはKepler世代初のミドルクラス型番採用モデルとなるGPU「GeForce GTX 660 Ti」(以下,GTX 660 Ti)を発表した。その製品名から想像できるとおり,「」(以下,GTX 670)の下位モデルということになる。

 8月半ば現在における実勢価格を見てみると,一部のオーバークロックモデルを除き,GTX 670は3万円台半ばから4万円強といったところ。対してGTX 660 Tiは,北米市場におけるNVIDIAの想定売価が299ドル。国内でも安価なものなら2万円台後半から購入可能となるため,数千円から1万円程度は「GeForce GTX 600シリーズ購入のハードル」が下がることになるわけだ。
 GeForce GTX 600シリーズに追加された,より安価な選択肢の実力はいかほどか。今回はASUSTeK Computer(以下,ASUS)から入手した搭載カード「GTX660 Ti-DC2T-2GD5」を使って,GTX 660 Tiの持つポテンシャルを明らかにしてみたいと思う。

CUDA Core数,動作クロックはGTX 670と変わらず!一方で弱点のメモリ周りはさらに削減される
GTX 660 Ti GPU。ダイ上の刻印は「GK104-300-KD-A2」だった  まずは,GTX 660 Tiの基本スペックから見ていきたいと思うが,結論めいたことから先に述べると,GTX 660 Tiが採用するGPUコアは「GK104」となる。つまり,「」(以下,GTX 680)やGTX 670と同じ。「ミドルクラスのGPU用に専用設計したGPUコア」を採用しているわけではないのだ。
 ……もっとも,GK104のダイサイズはFermi世代におけるミドルクラスGPUコア「GF114」の360mm2より小さい294mm2なので,その意味では「ダイサイズと製品の位置づけがようやく一致した」と言えなくもない。
NVIDIAが示す,GTX 660 Tiのリファレンススペック  ともあれ,192基のCUDA Coreが,L1キャッシュやテクスチャユニット,ジオメトリエンジンたる「PolyMorph Engine 2.0」などと一緒に「Streaming Multiprocessor eXtreme」(以下,SMX)を構成し,そのSMXが2基集まって“ミニGPU”たる「Graphics Processing Cluster」(以下,GPC)となるあたりはGTX 680やGTX 670と完全に同じである。
 GK104コアのフルスペックとなるGTX 680だとGPCは4基で,GTX 670はそのうち1基のGPCでSMXが1基無効化されていたのを憶えている人も多いだろうが,実のところ,GTX 660 TiのGPC構成はGTX 670と変わらず。192基×7(SMXの数)で,CUDA Core数は合計1344基だ。付け加えておくと,GPUコアのベースが915MHz,ブーストが980MHzで,メモリが6008MHz相当(実クロック1502MHz)というクロック構成もGTX 670とまったく同じである。

GK104コアのブロック図をベースとしたGTX 660 Tiのブロック図(※イメージ)。SMXが1基削減されているだけでなく,メモリ周りもごりごりと削られている  では何が違うのかだが,それはメモリ周りとなる。GTX 660 Tiでは,メモリ周りの基本スペックが,GTX 670比で75%となっているのだ。具体的には,


といった感じで,当然のことながら,バス帯域幅もGTX 680&670の192.26GB/sから144.19GB/sへと25%低下している。

 では,GK104コアが持つ大きな弱点がメモリ周りにあり,メモリに高い負荷がかかるようなグラフィックス設定を行ったり,極度に高い解像度設定を行ったとき,GTX 680やGTX 670のスコアが低下しやすいことを指摘してきた(,)。そんなGTX 680やGTX 670からメモリインタフェースのスペックがさらに引き下げられたわけで,GTX 660 Tiは,上位モデル以上に弱点が露呈しやすい製品になったといえるだろう(表1)。


 ただ,NVIDIAもその点は織り込み済みのようで,同社は,「GTX 660 Tiのターゲットとなる解像度は1920×1080ドットである」としてきた。「ミドルクラス市場向けGPU」として見る限り,その主張は妥当なようにも思えるが,実際のところは後ほど検証したい。


GTX 670と変わらず6ピン×2構成メモリは2Gbit品8枚で2GBを実現
NVIDIAの製品紹介スライドより。GTX 670リファレンスカードに似たシルエットが示されている  NVIDIAに近い業界関係者いわく,今回NVIDIAはGTX 660 Tiのリファレンスデザインを用意しておらず,同時に,メーカーレベルのクロックアップ品を投入するよう推奨しているとのこと。そのため,「定格クロック仕様で登場する,リファレンスデザインのカード」という製品が登場する可能性は限りなくゼロに近いのではないかと思われるが,それを踏まえつつ,ここからは入手したGTX660 Ti-DC2T-2GD5をチェックしていきたいと思う。

 というわけでまずカード長だが,実測で266mm(※突起部含まず)となっており,GTX 680リファレンスカードの同253mmや,GTX 670リファンレンスカードの同242mmよりもかなり長い。ただ,これはASUSご自慢の「DirectCU II」クーラーがカード後方へはみ出しているためで,基板自体の長さは同232mmとなっていた。


 上の表1でも示したとおり,PCI Express補助電源コネクタは6ピン×2で,これはGTX 680やGTX 670と同じ。外部出力インタフェースがDual-Link DVI-D×1,Dual-Link DVI-I×1,DisplayPort×1,HDMI×1というのも,上位モデルと変わっていない。

DirectCU IIクーラーを取り外したところ。電源部専用のヒートシンクと,カードを補強する金属板が取り付けられている  GPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為であり,取り外した時点で保証は受けられなくなる。その点をお断りしたうえで,今回はクーラーを取り外してみるが,「銅製(CU)ヒートパイプがGPUと密接(Direct)する」というDirectCUの謳い文句どおりの設計になっているのを確認できる。
 ASUSによれば,(NVIDIAがカードベンダー各社に配布したと思われる)リファレンスデザインと比べて,GTX660 Ti-DC2T-2GD5のDirectCU IIクーラーはGPUを8℃低く保つことができ,また,動作音を9dBA低く抑えられているとのことだ。
GTX660 Ti-DC2T-2GD5は電源部専用のヒートシンクと補強板も取り付けられている。写真はそれぞれを取り外したところ
GTX660 Ti-DC2T-2GD5の基板  一方の基板側だが,こちらはなかなかリッチな構成である。電源部は,ASUS独自のデジタルVRMコントローラ「DIGI+ VRM」によるデジタル制御で,そのフェーズ数は基板を見る限り6+1。また,ASUSが独自に選定した電源コンポーネント群「Super Alloy Power」を搭載することにより,発熱の低減や長寿命化を果たしているとされるのもポイントとなっている。
メインの電源部(左)。三洋電機製の導電性高分子タンタル固体コンデンサ「POSCAP」や,物理的に振動しないため,いわゆるコイル鳴きを防ぐことができ,発熱も抑えられるというコイル「Super Alloy Choke」,低発熱を謳うMOSFET「Super Alloy MOS」などからなる。POSCAPはカード裏面,GPUの裏側部にも取り付けられていた(中央)。右は6+1の「+1」側。1フェーズだが,規模は大きい印象だ
搭載するグラフィックスメモリチップ  搭載するメモリチップは基板の表側に6枚,裏側に2枚。GTX 670リファレンスカードと同じく,SK Hynix製の2GbitチップGDDR5「H5GQ2H24AFR-R0C」(6Gbps品)を8枚搭載することで,容量2GBを実現している。
 基板上に空きパターンが4つあるのもGTX 670リファレンスカードと同じなので,ひょっとするとASUSは,Lineage2 RMT,DirectCU II搭載のGTX 670カードと今回のGTX 660 Tiカードとで基板設計を共通化しているのかもしれない。


GTX 670のほか,Fermi世代のGTX上位モデルとも比較ドライバはレビュワー向けの「305.37」を利用 テスト環境の構築に移ろう。
 今回,GTX 660 Tiの比較対象としては,直接の上位モデルとなるGTX 670のほかに,「」(以下,GTX 560 Ti),そしてその上位モデルである「」(以下,GTX 570)および「」(以下,GTX 580)を用意した。つまり,GTX 670との力関係を把握するとともに,Fermi世代の“中の上”以上に対してどのあたりに置かれるかも確認しようというわけである。
 また,NVIDIAはGTX 660 Tiを,「」(以下,HD 7870)の対抗にして,「」(以下,HD 7950)と十分に戦える存在とも位置づけているため,両GPUも用意している。

 なお,GTX660 Ti-DC2T-2GD5は,いわゆる「TOP」モデルとなっており,メーカーレベルでその動作クロックがベース1059MHz,ブースト1137MHzへと大きく引き上げられているメモリクロックはリファレンスどおりのだが,本稿ではリファレンスと同じベース915MHzにまで,EVGA製のオーバークロックツール「Precision X」(Version 3.0.3)を用いて引き下げている。「GTX660 Ti-DC2T-2GD5としての定格動作」を行ったときのテスト結果は追って掲載するので,この点はご了承のほどを(※8月17日0:03追記:)。

GTX660 Ti-DC2T-2GD5の「カードとしての定格動作時」にNVIDIAコントロールパネルからシステム情報を見たところ。接続がPCI Express 2.0になっているのは,テストシステムに「Intel X79 Express」搭載マザーボードを用いているためだ
Precision XからGPUクロックオフセットでベースクロックを915MHzまで下げたところ,動作クロックは最大1045MHzとなった  また,これは当然のことではあるのだが,GTX660 Ti-DC2T-2GD5は独自基板に独自クーラーを採用しているため,ベースクロックをリファレンス相当にまで落としても,自動クロックアップ機能「GPU Boost」で到達するクロックは,NVIDIAのリファレンスより高くなる可能性がある。今回,ベースクロックを915MHzに指定したとき,GTX660 Ti-DC2T-2GD5の動作クロックは最大1045MHzにまで上がっていたが,異なる基板,異なるクーラーを搭載するGTX 660 Tiカードではここまで上がらない可能性があることにも注意してほしい。
 そのほかテスト環境は表2のとおり。テストに用いたカードのうち,「Radeon HD 7950」(以下,HD 7950)搭載のGIGA-BYTE TECHNOLOGY製品「GV-R795WF3-3GD」と「Radeon HD 7870 GHz Edition」(以下,HD 7870)搭載のASUS製品「HD7870-DC2-2GD5」もメーカーレベルのクロックアップ品であるため,同様にクロックをリファレンス相当にまで落としている。


 GeForceのテストに用いたグラフィックスドライバ「GeForce 305.37 Driver」は,GTX 660 Tiの検証用として,NVIDIAから全世界のレビュワーへ配布されたものだ。一方,Radeonのテストには,テスト開始時点の公式最新β版となる「」を用いることにした。

 テスト方法はの準拠。解像度は,NVIDIAがターゲットとする1920×1080ドットのほか,「高解像度条件下ではどうなるのか」を見るべく,2560×1600ドットも選択している。
 ちなみにこれはいつもどおりだが,テストに用いたCPU「Core i7-3960X Extreme Edition/3.3GHz」の自動クロックアップ機能である「Intel Turbo Boost Technology」は,テスト内容によってその効果に違いが生じる可能性を否定できないため,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化済みだ。



3D性能はGTX 670から1割減。メモリ周りの影響は大だがGTX 580を過去のものにするインパクトも大きい
 前置きが長くなってしまったが,テスト結果を順に見て行こう。
 グラフ1は,「3DMark 11」(Version 1.0.3)で,「Performance」と「Extreme」の2つのプリセットにおける総合スコアをまとめたものだ。GTX 660 Tiのスコアは対GTX 670でPerformanceが約96%,Extremeが約89%となっており,メモリ周りのスペックが抑えられた影響をここから見て取れそうである。

 ただ,絶対的なスコアは相当に優秀ともいえる。ライバルとなるHD 7870に対して23?27%程度,HD 7950に対して12?16%高いスコアを示すだけでなく,Fermi世代のシングルGPU最上位モデルたるGTX 580に21?24%程度のスコア差をつけているのも見逃せない。
 さらにいえば,GTX 560 Tiとの勝負なら72?74%程度も高いスコアだ。

※グラフ画像をクリックすると,Performanceプリセットのスコア基準で並び替えたグラフを表示します
 実際のゲームアプリケーションだとどういう結果になるだろうか。
 「S,カバル RMT.T.A.L.K.E.R.:Call of Pripyat」(以下,STALKER CoP)の公式ベンチマークテストに用意された4つのテストシークエンスから,最も描画負荷が低い「Day」のスコアをまとめたものがグラフ2,3となる。

 GTX 660 Tiのスコアは,アンチエイリアシングおよびテクスチャフィルタリングを適用していない「標準設定」だとGTX 670比で89?93%程度と,3DMark 11の結果をほぼ踏襲。一方,4xアンチエイリアシングと16x異方性フィルタリングを適用した「高負荷設定」だと,スコアは80?81%程度にまで下がった。
 ここまで置いて行かれると,ほかの比較対象との立ち位置にも変化が生じてくる。最も分かりやすいのは,384bitメモリインタフェースを持つHD 7950とのスコア差だろう。標準設定だとGTX 670が16?19%高いスコアを示しているのに対し,高負荷設定の1920×1080ドットで追いつかれ,そして2560×1600ドットだと逆転されているのだ。GTX 660 Tiの弱点を如実に表しているといえる。

※グラフ画像をクリックすると,解像度1920×1080ドットのスコア基準で並び替えたグラフを表示します。以下,グラフ15まで同
 グラフ4,5は,STALKER CoPのテストシークエンス中,最も描画負荷の高い「SunShafts」の結果だが,Dayの結果から予想できるとおりの結果に落ち着いた。
 ここでもHD 7950との比較を行ってみると,標準設定の1920×1080ドットでは約4%のリードを保つものの,高負荷設定の2560×1600ドットでは逆に約8%のスコア差をつけられている。

 もっとも,GTX 580に対して6?18%程度,HD 7870に対して10?29%程度高いスコアを示し,GTX 670に対しても83?90%程度に留まっているわけで,製品の位置づけを考えればかなり健闘しているともいえるのだが。


 続いて,STALKER CoPほど極端にグラフィックス描画負荷が高いわけではない「Battlefield 3」(以下,BF3)の結果を見てみよう(グラフ6,7)。GTX 660 Tiのスコアは対GTX 670で83?91%程度。高負荷設定でスコア差が開くのは,3DMark 11やSTALKER CoPと同じである。
 一方,対HD 7950では14?30%程度,対GTX 580でも6?15%程度高いスコアを示した。メモリ周りの弱点があるとはいっても,極端な高負荷環境でなければ十分なスコアを示せるわけだ。


 グラフ8,9は,「Call of Duty 4 Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)のテスト結果となる。
 Call of Duty 4は古い世代のタイトルということもあって,グラフィックスメモリへの負荷は大きくない。現行世代のハイクラスGPUにとってはほとんど無視できるレベルといってもいいくらいだが,実際,GTX 660 Tiのスコアは,テスト条件にかかわらず対GTX 670で90%超と安定している。

 なお,HD 7870に対して,標準設定の2560×1600ドットで後塵を拝した理由はよく分からない。Radeonファミリーのほうが古い世代のDirectX 9タイトルに強いので,それがスコアとなって現れた可能性はあるだろう。


 Call of Duty 4と同じDirectX 9世代ながら,最新世代のエンジンを採用するタイトル「The Elder Scrolls V Skyrim」(以下,Skyrim)のスコアがグラフ10,11だ。

 テストにあたっては公式の高解像度テクスチャパックを導入しているので,描画負荷は相当に高いのだが,そうなるとGTX 660 Tiは案の定といった結果を示す。というか,標準設定の1920×1080ドットと,それ以外では,GTX 660 Tiの立ち位置が極端に異なるのである。
 NVIDIAがターゲットとする解像度で,かつグラフィックスメモリ負荷が最も低い条件だと,GTX 660 Tiは2番手スコアだ。だが,それ以外のテスト条件だと,一気に立場が悪くなる。とくにSkyrimでは高負荷設定の代わりに,8xアンチエイリアシングと16x異方性フィルタリングを適用することでより描画負荷を高めた「Ultra設定」を採用していることもあって,GTX 660 Tiのスコアは下から数えたほうが早くなってしまった。


 続いてグラフ12,13は「Sid Meier's Civilization V」(以下,Civ 5)の結果となる。
 Civ 5のテストでは,純然たるグラフィックス性能だけでなくGPGPU性能も見ることになるため,GPGPU性能にフォーカスしたHD 7950のスコアが高めに出る。なのでそれ以外の素顔を見ていくと,GTX 660 Tiは,標準設定なら申し分のないスコアを示すことができると述べられそうだ。標準設定に絞って話をする限り,GTX 660 TiはGTX 580より4?7%程度,HD 7870より9?13%程度高いスコアを示している。


 性能検証で最後となるのは,グラフ14,15の「DiRT 3」である。
 DiRT 3のスコアは,3DMark 11のそれを踏襲した結果になりやすいのだが,GTX 660 Tiは対GTX 670で89?96%程度。対GTX 580では15?25%程度,対HD 7870では8?20%程度高いスコアとなった。HD 7950に対しても,高負荷設定の2560×1600ドットで逆転を許したのを除けば3?13%程度高いスコアだ。



消費電力はGTX 670から最大20Wほど低下かDirectCU IIクーラーの能力は良好
 序盤の表1で示したとおり,GTX 660 TiのTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)は150Wで,GTX 670の170Wから20W下がっている。TDPはあくまでも消費電力の目安であり,消費電力とイコールではないものの,GTX 670から足回り分だけ消費電力が下がっていることはまず間違いない。実際のところを検証してみよう。

 今回は,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を測定する。
 テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。

 その結果がグラフ16だ。
 まずアイドル時は,GTX660 Ti-DC2T-2GD5が持つ「搭載する部品点数が多い」という仕様のためか,GTX 670リファレンスカードよりも若干高い値となった。ただ,Fermi世代のハイエンドGPUと比べると確実に低い印象である。
 なお参考までに,無操作状態が長く続いたとき,ディスプレイ出力が無効化されるよう設定したところ,HD 7950とHD 7870は「AMD ZeroCore Power Technology」によってそれぞれ76Wと75Wにまで下がるのを確認済みだ。

 一方の各アプリケーション実行時だと,GTX 660 Tiのスコアは279?304W程度。GTX 670と比べると9?20W程度低いレベルで,HD 7870と同程度になる。Fermi世代の3製品よりはかなり低く,とくに3D性能でほぼ圧倒したGTX 560 Tiに対して7?32W低いというのは特筆すべきだろう。

※そのまま掲載すると縦方向のサイズが大きくなりすぎるため,簡略版を掲載しました。グラフ画像をクリックすると完全版を表示します
 最後に,3DMark 11の30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともどもTechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.6.4)から各GPUの温度を追った結果がグラフ17だ。テスト時の室温は24℃。テストシステムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態に置いている。

 用いたグラフィックスカードはいずれもクーラーが異なり,ファンの回転数制御方法も温度データの取得方法も異なるため,横並びの比較には適さない。なので参考程度に見てもらえればと思うが,GTX660 Ti-DC2T-2GD5に搭載されたDirectCU IIクーラーは,高負荷時にもGTX 660 Tiを70℃に抑えており,冷却能力はなかなかに優秀だといえる。


 ちなみにDirectCU IIクーラーのファン回転数は,テストを通じて1140?1530rpmで変化していた。毎度筆者の主観であることを断ってから続けると,画期的に静かというわけではないものの,耳障りと感じることはなく,総じて静かなほうだと述べていいように思われた。


23?27インチワイド,1920×1080ドットのディスプレイを使っているならアリ
 以上の結果から導き出される答えは明快だ。GTX 660 Tiは「23?27インチワイドで解像度1920×1080ドットという,現在最も売れ筋の液晶ディスプレイを使っている人が,3D性能に軸足を置きつつ価格対性能比と求めるときの,2012年夏時点における最適解」ということになるだろう。

 とにかく弱点は明白なので,グラフィックスメモリを“喰う”タイトルをプレイするときにはアンチエイリアシング設定を落としたり,それこそNVIDIAが提唱するFXAA(Fast approXimate Anti-Aliasing)をNVIDIAコントロールパネルから強制適用したりなどといった対策が必要になる。
 また,299ドルという想定売価はの249ドルより50ドル高く,必ずしも一世代前のミドルクラスTi製品たるGTX 560 Tiをそのまま置き換えるわけではない。確実に2万円台で購入できるような,GTX 560 Tiの純然たる後継製品を狙っているのであれば,“GTX 660 Tiと「GeForce GT 640」の間を埋めるGPU”の登場を待つ必要があるかもしれない。
 注意すべき事項はあるものの,割り切って使っていける人にとってGTX 660 Tiは間違いなく魅力的な存在だ。GK104コアがより身近なものになるのを,素直に歓迎したいところである。
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