2012年12月27日木曜日

「グラナド・エスパダ ルネッサンス」が挑む“新時代の運営モデル”とは? 6周年を目前にした中尾圭吾プ

 ,ハンビットユビキタスエンターテインメント(HUE)は,オンラインRPG 「」(以下,GE R)で,2012年7月14日に行われる“重大発表”の予告となる特設ページを公開している。
 当該ページで流れる動画を見れば,その重大発表とは,サービスインから6周年を迎えるGE R自体の大規模なリニューアルだと予想できるが,少々気になるのは“オンラインゲームの未完成の領域に挑む”という大仰な文言である。

 読者であればご存じだと思うが,キム?ハッキュ氏渾身の一作「グラナド?エスパダ」は,鳴り物入りで登場したものの,日本での運営は決して順風満帆とは言えなかった。無料化などの大変革を経てもさほど大きな変化はなかった。それがこの数年で大きく伸びてきたのは,現在の日本運営チームの手腕によるところが大きいと言えるだろう。しかし,特設サイトの運営プロデューサーよりと記載されたメッセージ動画には「え,そんなこと言っていいの?」とこっちが心配してしまうような内容が綴られている。

 今回,では,そのメッセージの真意を問うべく,GE Rの運営プロデューサーであるHUEの中尾圭吾氏に話を聞いてみた。氏がGE Rとそのプレイヤーについて日々考えていることの一端と,リニューアルに懸ける意気込みが伝われば幸いである(中尾氏の経歴などについては,の記事を参照)。



オンラインゲーム運営が常にプレイヤーから叩かれる理由とは?
グラナド?エスパダ ルネッサンス 運営プロデューサー 中尾圭吾氏氏。なぜか背景に懐かしいポスターが  まず,気になる「オンラインゲームの未完成の領域」とはなにか? それは運営とプレイヤー間の距離感に関するものだとのこと。中尾氏は,GE Rの運営に関わってきた6年間を振り返ったときに,実は,プレイヤーに対して自信を持って提示できる実績がほとんどないのだと語った。
 運営チームがプレイヤー向けにやってきたこととして,中尾氏が挙げた実績は以下のとおり。

 (日本オリジナルプレイキャラクター?対人コンテンツ?コスチュームなど)

 ざっと見ても,それなりに意欲的に取り組んでいるほうだろう。その結果として,前述のように,GE Rが現在もコンスタントに新規プレイヤーを獲得して成長し続けるタイトルに育てていることは,評価されてしかるべき業績といえる。しかし,中尾氏はそうは考えていないようだ。

 「売り上げの向上,プレイヤー数の増加など,事業者としての実績はさておき,プレイヤーのコンテンツ&サービスを提供する運営プロデューサーとして評価される事例は,BOTの排除くらいではないでしょうか……」(中尾氏)

 現実問題として,何をやっても真っ先に表面化するのは反対意見だ。ネット上の掲示板には不満を表すような書き込みが並ぶ。これには“満足しているプレイヤーはわざわざ報告しない”という理由もあるのだろうが,中尾氏は対プレイヤーへの施策が不十分であることが原因だったと考えているようだ。

 「オンラインゲームの運営が叩かれるのは,作り手と売り手の両方に問題があるからだと捉えています。表面化しているのがすべて不満の声になってくると,いずれサービスが成立しなくなるのではないかと思います。この先もゲームを運営していくのであれば,現時点で売り上げやアクティブユーザー数が好調だったとしても,いつか水の泡になりそうで怖いですね」(中尾氏)

 では,なぜオンラインゲームの運営は叩かれるのだろうか。

 「うーん,難しいですけど,まずは月々,プレイヤーの方から対価をいただくサービス業としては,オンラインゲームの運営と開発って,恐ろしく不透明に見えるからでしょうね」(中尾氏)

 中尾氏は,運営開発チームが叩かれる理由の一つめとして,“オンラインゲームの運営開発が不透明であること”を挙げる。
 例えば,衣類や料理などのリアルの商品なら,素材の伽渲谱?調理の手間などから,どこに資金が使われているのかを確認できる。しかし,オンラインゲームの場合は,グラフィックスを除けば,どこに資金が投じられているのかが曖昧で分かりにくい。まして,コンテンツを提供している運営陣の顔が直接見えるわけでもない,作り手と売り手のダブルの“不透明さ”である。

 「これは,ありがたいことでもあるのですが,オンラインゲームだとプレイヤーの方が毎日数時間も遊んでくださるのは,そう珍しいことではないですよね。ですから,プレイヤーさんは毎日数時間にわたって,ゲームに“こうあってほしい”,“こうなればいいな”という思い入れを蓄積させているわけです。しかし,そういった相手に対して十分に応える明確な方法は今のところ存在しないような気がします」(中尾氏)

 二つめの理由として挙げられたのは,“アクティブに活動してる時間の長さから発生するプレイヤーの思い入れに応えられない”点だ。すでにある娯楽業や,ほかのインターネットサービスの運営ノウハウでは,参考にしてもまったく届かないと氏は述べた。

 いずれの理由も,ある意味,直接プレイヤーと顔を合わせずともサービスを提供できるというオンラインゲームの特徴と,ゲーム自体の構造から生ずるものではあるが,中尾氏は,だからといってそれを“覆すことができないもの”と決め付け,思考停止していいものかと以前から自問自答していたそうだ。

 「今回のGE Rのリニューアルでは,そういった“今のオンラインゲームでは当たり前”になってしまっている見解や不可能に挑戦したいと思っています。それが,“オンラインゲームの未完成の領域に挑む”ということなんです。今回は,日本の運営チームと韓国の開発チームが一丸となって,ゲームの内容からサービスに至るまですべてを,これからの時代に対応できるようにリニューアルします」(中尾氏)


プレイヤーとの接触機会を増やして“思い入れ”を汲み取り“不透明さ”を払拭
 リニューアルの具体的な内容は,2012年7月14日に行う発表を待ってほしいという運営開発チームの意向により,本稿の掲載タイミングでは言及できないのだが,中尾氏は,そのヒントとして,ティザーサイトに掲げられたテーマ関する説明をしてくれた。
 それは以下の二つだ。


 「“いつ始めても楽しいゲーム”というのは,自分が初めてゲームを遊んだときに求める感覚があって,それを組み込んだカタチというか,そんなニュアンスです」(中尾氏)

 常にプレイヤーがたくさんいて,ストレスなく,初心者が自分のペースで楽しめるような環境を用意するという。ともすれば,オンラインゲームの運営チームがサービス開始前に口にする常套句のようにも聞こえるが,GE Rでは,初心者推奨サーバーを設けて新規プレイヤーをまとめるなどの施策をすでに行ってきている。今回のリニューアルでは,これまで試験的に取り組んできた施策の総決算として,リアルタイムインゲームサポートを本格的にシステム化するということも含んでいるようだ。

 「リアルタイムインゲームサポートは,ゲームプレイ中に分からないことがあったときに,わざわざ別ウィンドウを開いて探すのが面倒だったので導入したものです。疑問に答えるという形で組んでいたものですが,やっているうちに拡充の可能性が大きく見えてきた感じです」(中尾氏)

 氏の話から推測すると,正式導入にあたっては,その内容も大きく強化?拡大されていく模様だ。

 「ほかにも新しく始める人には,また違う観点で企画してみた新施策も用意しています。今までやってきた内容とは,まったく趣旨が違いますので反応は人によってさまざまでしょうね。やったことがない施策ですので,どうなるかは不明ですが……」(中尾氏)

 あらためて説明すると,このサービスは,新規プレイヤーが最初に所属する「GE開拓党」にGMが参加し,連日決まった時間にGE Rにまつわる疑問に対しリアルタイムで答えたり,さまざまなサポートを行うという内容である。これまでは試験運用だったとのことで,正式採用にあたっては,その内容も強化?拡大される模様だ。

 また,“長く遊んでいける運営のカタチ”については,よりプレイヤーの立場に寄った視点からコンテンツとサービスの調整を図っていくとのことである。

 「オンラインゲームにおける運営プロデューサーの役割は,経営陣,開発チーム,プレイヤーをつなぐことですから,三者の中間に立たなければなりません。しかし,業務の都合上,経営陣と開発チームとは会議や打ち合わせなどで定期的に会っていますが,プレイヤーと直接顔を合わせて話す機会は少なくなってしまいます。そのため,私が実際に立っているのは,経営5:開発3:プレイヤー2くらいの地点になっています。おそらく,GE Rのこれまでを知っている方なら感じていることと思います。そこで,その比率を逆転させてプレイヤーを最優先する……というのは,すぐには難しいのですが,まずは比率を均等に持っていきたいのです」(中尾氏)


 中尾氏は,立場上,アラド戦記 RMT,完全にプレイヤーの側になることは無理としても,近づくことはできるはずと述べる。また,オンラインゲームの運営はサービス業であり,顧客がいないと成り立たないと述べ,「その顧客たるプレイヤーの意見がないがしろにされるのは,DQ10 RMT,本来あるべき姿と逆転しています。顧客の意見──とくに,少数であっても長く遊んでくださるコアプレイヤーの意見がきちんとまとまれば,経営陣も開発チームも納得できる内容に落とし込めるはずなんです」とも語っていた。

 要するに,プレイヤー本位の運営体制を目指すということなのだが,はっきり言うと,どこの運営でも同じようなことをアピールしているのであまり目新しい感じはしない。これが掛け声だけになってしまったりはしないのかと,具体的な方策についても尋ねてみた。

 「リニューアルの内容も新しい運営モデルもあまりお答えできなくてすいません。発表会では,具体的に何をやるのかしっかりと見える形で出しますので,この場では勘弁してください。自分で構想を立ち上げておいてなんですが,現時点でもう胃が痛くなるくらいのものは用意しています。。中途半端に情報を出して,情報がブレてしまうと混乱を招きますので,オフラインバーティーで一斉にプレイヤーの皆さんにお伝えしたいと思っています」(中尾氏)

 もう少し詳しく話を聞くと,これまで試験的にやってきたいろいろな運営施策とプレイヤーの反応から,ある程度の確度を持って「行ける」と判断されたプランが用意されているようだ。

 さらに中尾氏は,運営?開発で用意したリニューアルを終えたあとは,プレイヤーからの意見をまとめるために,これまで以上にプレイヤーと直接接する機会を増やすと説明。これは,公式サイトに設置されているディスカッションボードに足りなかった要素を補い,より発展させたようなものになるとのこと。

 「オンラインゲームが盛り上がっているアメリカや韓国では,結構ユーザーの方とやり取りをしていますよね。実はアメリカのゲームでのそういったやり取りを見て,自分達の立ち位置をもう少しプレイヤー側にできるのではないかと思ったんですよ」(中尾氏)

 これら2方向のリニューアルは,オンラインゲーム運営としてはかなり大規模な変革となるようで,中尾氏自身も成否に確信は持てないと語る。しかし,少なくとも,これから行われる施策によって,「今までよりは,オンラインゲームが確実に透明化されていくはずです」と中尾氏は締めくくった。


 6年目を迎えて,心機一転のリニューアルを試みるGE R。「オンラインゲームの運営を改善する」と言葉にするのは簡単だが,実現するのは簡単ではない。また,運営を改善するといった動きは行われて当然のものであるが,いま確かに足りない状態となっているのも事実である。
 しかし,GE Rのこれまでの取り組みには,今回挙げていたような問題意識によるものと思われる試みが多く存在する。Facebookでの展開やゲーム内での座談会が長期間にわたって行われていたことを覚えているプレイヤーも多いだろう。そういったものはすべて今回の動きにつながっていると思われる。あえてこのように大上段に立った展開を行う裏には,そういった試行錯誤を積み重ねた結果の決定版となる施策ができあがったことがあるのではないだろうか。

 さすがに発表前ということで,具体的なリニューアル内容の公表は控えられたが,これらの中尾氏の考えが反映されたGE Rリニューアルの詳細は,2012年7月14日に正式に発表される。オンラインゲームの完成形を目指すというHUEの動きに注目してみたい。
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