テラ RMT毎年SIGGRAPHでは,商用化や製品化前の先端技術を発表する展示会「Emerging Technologies」が開かれている。ここには毎年,世界中から集まった大学の研究室や企業の研究部門がブースを構えているが,とくに日本の大学は積極的に出展しており,そこかしこで日本語の会話が聞こえてくるほど日本人来場者が多いというコーナーだ。
今年のEmerging Technologiesで一番人気を集めた展示は,すでにレポートしたNVIDIA製HMD「Near-Eye Light Field Displays」だったが,それ以外にもユニークな展示が多く見られたので,前後編に分けてレポートしたい。
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Incendiary reflection
東京大学・吉田成朗研究室,日本
人間の顔の多彩な表情は,スカーレットブレイド RMT,人の感情を反映したものだ。だが,感情の変化と表情の変化が逆の順序で起こることも,珍しくないことをご存じだろうか。たとえば,他人が笑っている姿を見てつられて自分も笑ってしまい,そのあとなんとなく楽しい,嬉しい気分になる,といった現象がそれだ。
19世紀の心理学者であるジェームズ・ランゲ(James Lange)は,こうした現象について,「人間は生理現象や行動が先にありで,感情はあとから付いてくるのではないか」と説明した。いわゆる「ジェームズ・ランゲ説」(James-Lange theory)だ。この説によれば,上の例は「笑う」という行動が起きたことで,「嬉しい」という感情を誘発した,と説明されるわけだ。
東京大学の吉田成朗研究室が発表した「扇情的な鏡 / Incendiary reflection」は,この学説を素に,コンピュータと画像処理技術を使って「人の体験を変える」サービスを実現することを試みたという,実にユニークなシステムである。
来場者が壁に掛けられた鏡のようなデバイスの前に立つと,その人の顔が映る。それはたしかに自分の顔なのだが,じっ~と見ていると徐々に微笑んだ表情になったり,あるいは微妙に悲しげな表情になったりといった具合に変化するというものだ。白額縁の鏡は笑顔に,黒額縁の鏡は悲しい顔に変化するようになっている。下に,吉田成朗研究室が公開したムービーを掲載しておこう。このシステムがどのように動くのか,イメージがつかめると思う。
Incendiary reflectionの展示。壁には普通の鏡と「扇情的な鏡」が混在しているので,予備知識がないと,表情が変わる鏡には一瞬驚かされる
Incendiary reflection / 扇情的な鏡
TERA RMTこのシステムは「扇情的な鏡」と呼ばれているように,鏡に映った表情が微妙に変わっていくことで,自分の感情が揺さぶられる現象を体験するものだ。嫌なことがあった日でも,この鏡を覗いて自分の笑顔を見れば,気分も晴れやかになる……ということを実現できれば,たしかに面白いサービスになるかもしれない。
システム構成は意外にシンプルだ。鏡のように見えるのはごく普通の液晶ディスプレイで,額縁の上側に埋め込まれた小型カメラで正面を撮影する。顔の認識や顔画像の変形処理は,PC側で処理して,写っているのが人の顔であると認識されたら,画像変形処理で目や口の形状を,別の表情になるように変形させるという仕組みである。
写真の体験者は,筆頭研究者の櫻井翔氏。黒額縁で悲しい顔になってもらった(左)。顔を認識したあと映像を変形させるのだが,右はその制御点を可視化させたものだ
会場で披露されたデモでは,壁の背後に置いたPCで動作させていたが,スマートフォン向けのアプリケーションで処理することも,十分可能だろう。最近ではスマートフォンや携帯電話を,手鏡変わりに活用する人も少なくないと聞くので,将来は「悲しくなったらスマートフォンの『扇情的な鏡』アプリを見て,自分を元気づける」なんてことが,現代人の習慣になったりする……のかもしれないRMT。
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